クラウドソリューション開発
CTO兼CISO梁行秀
「コンサルタントとエンジニアの境界線がなくなりつつある」と語る、株式会社グローバルウェイ・法人向けクラウドソリューション開発事業 CTO兼CISOの梁 行秀。次々と湧き上がる興味に挑戦し続けた自身のキャリアを振り返りながら、次世代エンジニアの育成にかける熱い想いを語ります。
IT業界では、コンサルタントとエンジニアの境界線がなくなりつつあると感じています。ひとつのものを作り上げるプロセスで、ひとりの人間がタイミングによってコンサルタントとエンジニアの肩書きを使い分けているイメージです。
コンサルタントとエンジニアは別職種ではありますが、コンサルタントにもエンジニアのような「作る能力」が求められますし、エンジニアにもコンサルタントのような「課題解決していく能力」が必要です。
結局は同じ目標に向かって行動しているわけですから、「コンサルタントだから」「エンジニアだから」という理由でやるべき作業を制限する必要はなく、ひとりの人間が最初から最後までできるようになることが一番の理想形です。そういう人材を増やしていきたいと考えていますし、顧客もそれを望んでいるように感じています。
私がエンジニアとしてのキャリアをスタートさせた原点は、高校生の頃にWindows98のパソコンに入っていた「駅探索ソフト」を使ったことです。あの時の感動は、今でも忘れられません。
大学生の頃には「今後はソフトウェアしか売れないのでは」と思うようになっていました。就職を考えたとき、「世の中が必要としているものを広めたい。でも、作り方が分からなければ売れない」と直感的に思いました。そこで、まずは作ってみるしかないなと考えたのです。
大学卒業後は、企業や官公庁のIT構築、運用などを一括して請け負う通信系SIerに入社しました。会社のこともプログラムのこともわからないまま、3年間ずっと大きな基幹システムのプログラムを書き続けました。協力会社と連携したり、オフショアを使って中国に行ったりしたこともあります。
さまざまな経験を経て、メンバーからプロジェクトリーダーへと着実にキャリア積み重ねていきました。大学時代に思い描いていた「売りたい」という目標を実現するために、最後はプリセールスも経験しました。当時社内賞を受賞したこともあり、実績は残せたと思います。
エンジニアとしての経験から「技術」を知っていたので、プリセールスで顧客に提案するときにも、自分でプログラムを書くことができたのが強みになっていました。今思えば、当時からコンサルタントめいたことをしていたわけです。
ちょうどその頃、世の中ではクラウドが流行り始めていました。でも、当時の会社ではクラウドは使われておらず、このままでは良くないと考え転職を意識していたタイミングで、知人からクラウドに力を入れているグローバルウェイの存在を教えてもらいました。
転職先の選択肢として大手外資系企業もあったのですが、“新しいことをやりたい”という気持ちがあったため、当時まだ上場前のベンチャー企業だったグローバルウェイに飛び込んだのです。
グローバルウェイ入社後、法人向けクラウドソリューション開発事業のマネージャーをしていたのですが、上場して会社が大きくなると、またここでも“次の何かをしなければいけない”と思うようになりました。
そんなときに気になったのが、コンサルタントの存在です。大きなプロジェクトがあると、必ずそこにはコンサルタントがいます。エンジニアだった当時の私は「コンサルタントなんて、いなくてもいいのに」と思っていました。
でも、コンサルタントの存在を否定するのは簡単ですが、やったことがない領域にチャレンジすることで得るものがあるかもしれないと考え、思い切ってコンサルタントの世界に飛び込むことにしたのです。
転職してコンサルタントになってみると、彼らが本当に苦労しながら構想策定をやっていることがわかり、次第にその重要性を実感していくことになりました。
コンサルタントに挑戦するための転職先として選んだのは、会計系コンサルティング会社でした。そこでITコンサルタントとしてAPIの構想を策定したり、自動車会社ので新しいコネクテッドカーの立ち上げに携わったりました。
コネクテッドカーの立ち上げでは、アメリカのソフトウェア会社のクラウドサービスと自動車をどうつなげていくのかを考え、製品化まで持っていきました。クラウド関係においては、グローバルウェイでの経験や知識が役立ちましたし、IoTのような機器に関しては、最初の通信系SIerでのキャリアが活かされていると実感しました。車の中の部品を分解してみたり、プログラムを見たりと、一般的なITコンサルの領域ではないところまで深く関わっていきました。
コンサルティング会社の仕事は、とても楽しかったです。業界の最前線で仕事をして、期待もされて、結果も出せる。ですが立ち止まって考えた時に、「自分のキャリアを積み上げていくだけで本当によいのか?」と思ってしまったのです。仕事で国内外の様々なメンバーと関わっていく中で、私は「日本は海外に負けているな」「このままでは差が開く一方だな」と感じていました。
グローバルウェイの人材育成方針は「体験させる」ということです。例えば、管理職研修も自分たちでカリキュラムを作って、自分たちのための研修として行うことがモットーです。
そして、もうひとつ特徴的なのは「ものづくり」です。業務以外でいくつかのテーマを設け、任意で集まって自分たちが興味あるものを企画し、1年間かけて作るという取り組みがあります。
参加しているメンバーは「教育」だと思っていないかもしれませんが、自ら課題を設定し、顧客の立場になることで、エンジニアの枠を超えてコンサルタント寄りの発想ができるようになっていきます。これは実際の顧客から課題をもらう業務では教えられないことですから、社内でやるしかないのです。
私自身のキャリアは折り返し地点のタイミングにさしかかっていますが、まだまだ今後も試行錯誤やチャレンジが続きそうでわくわくしています。若いエンジニアたちには、「ものづくりにはもっと可能性がある」ということを認識してほしい。
そのためにも、社会のためになるプログラミングや開発をきちんと学ぶことができる会社を選んでほしいと思います。時間を切り売りするようにプログラムの一部だけ作って終わりではなく、価値あるものをちゃんと一緒に作り上げて、プロセスも噛み締めながら「大変だったね」とカットオーバーの瞬間を共に味わう。そういう貴重な体験をたくさん積んでほしいです。
今の日本にはエンジニアが少なすぎるという危機感を、私は強く持っています。小学校でプログラミング教育が始まりましたが、それだけでは間に合わない状況です。
近い将来、プログラミングは話す言葉と同じように必要不可欠なものになって、もはや「職業」ですらなくなるかもしれません。今、私たちはその転換期にいます。先を見据えて、ものづくりができる力を大事にしながら、世の中にある課題を捉えて解決まで導く力も身につけていくことができればと思っています。